太鼓製作にあたって 東京学芸大学教授 澤崎 眞彦
十年以上も前になりますが、ブラジルの日系の方から依頼があり、サンパウロで日本の唱歌についての講演を行う機会がありました。その際、移住地の皆様方々の日本文化に対する熱い思いを肌で感じ、心動かされました。
そのことは、日本を離れてみて、初めて知った大きな感動でした。
その思いを受け継ぎ、今度は、民族芸能を取り組んでいた息子たちが、10年かけて、5回の南米公演を行いました。
その後移住地の方々と一緒に、民族芸能を行いたいという夢を抱き、5年前パラグアイのイグアス移住地に移り住みました。
さらに現在では、南米の木材で、日本の太鼓作りを始めました。
太鼓作りは、丸太を乾燥させ、くり抜くという気の遠くなるほど時間のかかる工程が必要です。
イグアスで、ようやく太鼓の生産が始まりました。
自分たちが使う太鼓や道具だけでなく、南米で民族芸能を行っている方々に、日本製の太鼓に劣らない南米産の太鼓を、是非使っていただきたいと考えております。もの作りに優れた方々が、一つ一つ丁寧に心を込めて太鼓を作っております。
決して安い楽器ではありませんが、パラグアイで作っていますので、運搬にかかる費用も軽減されますし、メンテナンスも行えます。
日本の太鼓の響きは、日系の方々だけでなく、南米の方々の心をも動かすものがあります。
丁寧に使っていただければ、いつまでもすばらしい響きを出し続けるものと確信しています。
工房にメッセージ1
頑張れ太鼓工房
イグアス日本人会前会長 福井 一朗
1999年と2001年にイグアス移住地で澤崎兄弟の所属していた民俗芸能の会「こだま」「いと」が太鼓公演を行ってくれたときは、本当に嬉しかった。
僕等は常に日本の文化を次の世代へ伝えたいと考えてはいるのだが、どうしても農業を中心に生活してきた我々には「おはしを持つ」「白い飯を食べる」というようなことしか伝えられない部分があったが兄弟の演奏や指導が移住地の若者へパワーを与え、移住地内の太鼓グループ結成までに至った。
ひたむきに練習する若者たちを見ていた僕は、イグアスを基点に太鼓の練習や公演活動を行う事で日本文化が広がっているな、そしてもっともっと広がったらいいな、と考えていたものだが、本格的に兄弟で移住してきたときには驚きを隠せなかった。「まさか本当にくるとは!」が正直な気持ちだったが、喜んで日本人会(現在の会長は公文義男さん)は受け入れたのを覚えている。
最初の頃は、太鼓の指導の他にも、琢磨は日本語学校の教師として、雄幾は農協のスーパーで働いてくれた。
その内に太鼓工房が立ち上がり、又その中で移住地内の人間が仕事をし(特に石井工房長にはピッタリの仕事だと思います)、農業以外の産業、大袈裟に言うと中小企業がイグアス移住地に誕生した事は、とても喜ばしいことです。
それが更に発展して、本年から会社組織として認知されたそうで、最初から関わってきた僕からしたら、幸せを感じます。
今まで、どこかひっかかっていた他国への輸出や税関などの問題も解決できる事だし、これを機に、南米の里∞太鼓の里<Cグアスを目指し、今以上になってほしい。
南米人の音楽性に太鼓の音とリズムは合っていて、どこで聞いても誰が聞いても、しらけないし、インパクトを与える。
僕は太鼓≠誇りにまで思っています。
イグアスの若者たちは常に「何かをやろう」それも「一人でなく一緒にやっていこう!」という気持ちを持っています。
現在は「言い出したのだから最後まで一人でやれ」的な発言が多い中で、こういう考えを持っている人間がイグアスの若者には多い。それは素晴らしい事だと思うし、これもどこかで太鼓≠サして澤崎兄弟の指導があったからではないでしょうか。
最後に本当に今までよく頑張ったと言いたいところですが、会社組織となった、ここからが本当の始まりです。
慣れない生活から、ようやく落ち着いてきたことと思うので、これからはドンと腰を据えて、生活の基盤、文化の基盤を、工房の皆と作っていってもらいたいです。頑張れ太鼓工房。
工房にメッセージ2
イグアス太鼓工房に期待する 民族歌舞団 荒馬座 代表 狩野 猛
民族歌舞団荒馬座は日本の東京で40年間民族芸能を中心とした公演活動をしているプロの歌舞団です。
年間300回前後の公演を行っています。
2006年9月私たちはパラグアイ移民70周年記念式典に招かれパラグアイ・ブラジルの各地の日本人移住地で公演してきましたが、その際イグアス太鼓工房より太鼓をお借りしました。日本の太鼓は欅などの堅い木をくり抜いた胴に牛の皮を張り鋲で留めています。
太鼓を借りるにあたって音の問題で心配はありましたが、イグアス太鼓工房の太鼓は、胴の材質は違うものの腕の確かな職人さんが作った太鼓だけあって、日本の太鼓に比べても遜色が無く安心して公演に使用することができました。
日本とは気候風土も違う中で、和太鼓を作り日本文化の伝承に努力されている工房のみなさんに敬意を表すると同時に、今後も研鑽を積み重ね、より良い太鼓を作り続けてくれることを期待しています。